コスタリカにある国連平和大学(UPEACE)への留学体験記、後編です。(前編の「キャンパスライフ・必修カリキュラム編」はこちらからどうぞ!)

今回は、私が実際に専攻した環境・開発学部(Department of Environment and Development)の「EDP(Environment, Development, and Peace)」コースの専門授業について、具体的なカリキュラムと学びのリアルをご紹介します。

座学だけでなく、フィールドトリップ(実地研修)を重視するEDPコースで、具体的にどのような議論が交わされているのか、留学や環境分野に興味がある方の参考になれば幸いです。

環境・紛争と持続可能性(Environment Conflicts and Sustainability)

環境学部の学生が全員必修となるのが、この「環境、紛争と持続可能性」の授業です。環境問題が引き起こす世界の紛争について文献を読み解きながら、ディスカッションと論述を繰り返します。

正解のない問いに論理的に答えるトレーニング

担当のJan(ヤン)先生は、コスタリカのエコツーリズムや林業を長年研究しているドイツ人の教授です。取り扱うトピック(地球環境の危機や資源の枯渇など)がどうしても悲観的にならざるを得ないため、現実的でシビアな視点を持つ授業でした。

授業は常に「小さなグループでのディスカッション」と「まとめた文章の提出」がセットです。毎回、正解のない難解な「質問」が用意されており、事前の膨大なリーディング(文献の読み込み)をこなしていないと全く太刀打ちできません。 「自分の意見を、論理的に文献に基づいて語る」という、大学院生として最も重要なスキルの最高のトレーニングの場になりました。

主な学習トピック

  • 地球環境の変化とグローバリゼーション

  • マルサス主義と人口増加に関する議論

  • 政治経済とグリーン経済の基礎

  • 自然資源の商品化と環境ガバナンス

  • 資源・気候変動がもたらす紛争と安全保障(Environmental Security)

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密猟に関することを学んだ日の「質問」

持続可能な農業(Sustainable Agriculture)

個人的に最も楽しみにしていたのが、Olivia(オリビア)先生が担当する「持続可能な農業」のコースです。森林伐採や違法集団といった重いテーマから一転し、食の未来に向き合います。

理論・実技・フィールドワークの完璧なバランス

この授業の素晴らしい点は、講義(理論)、実技ワークショップ、フィールドトリップ(実地視察)が満遍なく組み込まれていることです。知識のなさから発言を躊躇してしまう私にとっても、体感しながら学べる最高のカリキュラムでした。

計3回の日帰りフィールドトリップでは、コスタリカ現地の「コーヒー農家」「有機野菜農家」「畜産家」を直接訪問しました(会話はスペイン語ですが、先生が英語に翻訳してくれます)。さらに実技では、自分たちで「ぼかし肥料」やオーガニック肥料を作るワークショップも行いました。

主な学習トピック

  • グリーン革命と食の商業化

  • 食の安全(遺伝子組み換え、農薬、化学肥料のリスク)

  • アグロエコロジー(生物多様性を考慮した農業の原則)

  • 都市農業と水産業、畜産の現状

  • 有機栽培証明(オーガニック認証)とフェアトレードのメカニズム

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森林、林業、貧困(Forest, Forestry and Poverty)

第一学期の集大成とも言えるのが、このフィールドトリップメインの授業です。4泊5日で現地の森林実験場に泊まり込み、コスタリカの林業のリアル、違法伐採グループの取り締まり、NGOの植林活動などについて、現場の生々しい話を聞きます。(フィールドトリップの様子は別記事「グアナカステの木の下で」にまとめています)

違法伐採とREDD+についてのグループ発表

トリップ前にはグループプレゼンテーションがあり、私は「カメルーンの林業」をテーマに選びました。 森林破壊や違法伐採の実態、そして「違法木材の輸入国の大半がアジア(中国、ベトナム、そして日本も含まれる)」という不都合な真実、気候変動を抑制するための国際的メカニズムである「REDD+(レッドプラス)」の課題などを20分間で発表しました。 リサーチを通して、カメルーン以上にコンゴで大規模な違法伐採が行われていることや、JICAの取り組みなどを知ることができたのは大きな収穫でした。

主な学習トピック

  • 森林伐採の定義と森林の持つ価値

  • 貧困と森林の密接な関係

  • 違法伐採と木材取引の闇

  • 生物多様性と気候危機に対する考察

  • マーケット主体・自然主体の環境保全(Nature based solutions)

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まとめ:環境問題という「終わりのないトンネル」を歩く

環境問題は、緊急性が高いにもかかわらず「これ!」という完璧な解決策が存在しません。人間の道徳、世界のシステム、政治経済などあらゆる要素が複雑に絡み合っています。

多国籍な学生たちと意見交換をしていると、終わりのないトンネルを歩いているような感覚に陥ることもあります。地球の気温は上がり、海面は上昇し、食糧不足の危機が迫る中、悲観的になりがちなトピックです。 しかし、過去の先人たちが論じてきた文献を深く学び、「自分の頭で考えられる範囲(解像度)を広げる」という点において、UPEACEでの学びは本当に有意義なものでした。

「正解はないけれど、思考を続けること」。 先生たちがそのスタンスで私たちの言葉に耳を傾けてくれたからこそ、萎縮せずに意見をぶつけ合うことができたのだと思います。