服装の色合わせがちゃんと合う。アイシャドウのノリが良い。お気に入りの香水を纏って新品の革靴を履く。硬い皮が足の甲にあたって少し痛いけれど、ワクワクする。
自分の内に目が向くようになった。30歳をこえてからだろうか。
これまでは、ただ外の世界に驚嘆しながら、膨らむ好奇心のまま、世界を旅した。そして暮らした。
異文化という一言ではどうしても伝えられないほどの多様な色彩と人々との出会いがあった。だから文章を書き始めた。20代前半の文章を読んでみると、ちょっと見栄っ張りな文体が小っ恥ずかしくなったりするけれど、しっかり自分の目で世界を捉えていたのだなあと、過去の自分にちょっと感謝したりもした。
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「海の底をずっと辿っていくと、空につながっているのかもしれないね。」
「身体の中には無限の宇宙があるのかもしれないね。」
髪をととのえ、顔にクリームを塗って肌をととのえる。おでかけする時の気分で服装を変える。イヤリングや時計で華やかにする。使い古した鞄に愛着を感じる。電車の窓に映った自分を見て、今日の服、いいやん。と心の中でとなえる。お気に入りの香りが、誰か別の友達のお気に入りだった時はもっと嬉しい。誰かと一緒に食べるご飯も、飲むお酒も、全部内側に入ってくる。その時話す言葉や雰囲気で、それらはとても違った効果を発揮する。心から話せた日のお酒は、どんな高いお酒よりも美味しいけれど、どれだけ高いお酒でも、自分を閉じ込めた建前の会話しかできない場では味がしない。
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