誰かを想って経を唱えること。
もうこの世にはいないつながりに向かって文字を書くこと。
真剣に考えたことはこれまでなかった。
けれど、それはどこまでも優しくて静かな、泉の水面のように透き通った景観を思わせる。
人は生きることにばかり必死で、祈ることも、想うことも、話しかけることも忘れてしまうけれど、どうしようもない死について、あるいは命を蝕む病気について直面した時に、神でも仏でもいいから頼りたくなるものなのだと思う。
私の後ろで守ってくれている人は、かつて私に血を分けた誰かであって、彼らは私の知らない時代の中で生まれ育って、やがて枯れた命として土に還って行くけれど、それ以上に、それ以前に、想いを託す相手として、一番近くにいるのかもしれない。
悲しいと嘆くけれど、命の果てを意識しているのが私たちであり、嬉しいと喜ぶ時にも、それがかけがえのない自分の一瞬を彩るものだと知っているからこそなのである。
私は書きたい。
生き死にを超えて物語を綴って、誰かが泣いたり笑ったりすることを願う。
私は書きたい。
それが誰に届くかなどわからなくても、小さな祈りのような灯火を絶やさずに。
私は書きたい。世
間知らずで大したことは言えなくても、少なくとも誰かを大切にして生きているということを。

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